NHK大河「西郷どん」における着方の見方の考察

 先日の「石川さゆりナナメ帯締め」に引き続き、

これ知っていると面白いっていう、着方の見方を

もうひとつ。

ちょっと知ってると時代劇が数倍面白くなるというお話です。

  

現在放映中の NHK大河ドラマ 西郷どん。

主役を演じる鈴木亮平さんの素朴な笑顔に癒されつつ

毎週楽しみに拝見しているのですが、実はそれ以上に

気になる人がいます。

それは、島津斉彬公を演じる、渡辺謙さん。

相変わらずの存在感で、他を圧倒する演技。

それに加えて、さらに気になるのはその着物の着方です。

 

この方お殿様なんですが、やけに着物の衿の合わせ方がラフ。

本当にお殿様?と思うほど色気のある立ち姿。

 通常、位の高いお殿様クラスは衿を添わせてキッチリと

着る事が多い中、(分かりやすく言えばいわゆる、花婿さんのような

着方ですね。)この渡辺謙お殿様は、なんと、胸までゆったり、ザックリと

開けて懐にゆるっと遊びを持たせ、白い襦袢の衿がこれでもかと見えるほどに

着ています。

 

着物の胸を開けて懐にゆとりをもたせて着るというのは、洋服で言えば

白シャツのボタンを2つ開けて着るというのと同じ、つまりは、

抜け感を最大限にして、色気とか粋さを出すという

テクニック。

通常であれば、お殿様は粋である必要はないし一歩間違うと、

偽物のお殿様になってしまう・・・・。

でも、ここでの渡辺謙お殿様はリラックスした場面であるとは言え

余裕の抜け感!

 

しかし。

これこそが島津斉彬というお殿様の人物像を、この着方によって

表現していることに他ならないのですね。

時代の先を見ている人。

硬い約束事に縛られず、新しい風を感じている人。

そんな人物の背景もろとも、この懐の遊びひとつで

表現しているのではないかと、私は思います。

 

そして、もう一人。

松田翔太さん演じる、一橋慶喜

知らない人はいないこのお殿様。

桜吹雪の金さんよろしく、お忍びで夜な夜な遊郭

遊びに出かけているのですが、その着姿をよく見ると、

遊び人という設定のワリには、衿が詰まった堅い着方をしています。

まあ、商人(画家?)の若旦那という仮面を被っているという事を

差し引いて見ても、何ともアンバランス。

本人は、遊び人の真似事をして裾を端折っているけれど、

こういうところに「お殿様度」のニュアンスをプラスして、

「この人はただモノではない」感を表現しているのだとすれば、

すごく高度な表現なのではないでしょうか。

だってこれが、渡辺謙お殿様ほどの遊びある懐であれば、

本当に心底ワルで粋な遊び人になってしまって、それこそ

お話になりませんから。

 

時に、今回このドラマの衣装を担当するのは、あの、黒澤和子氏。

父上(黒澤明監督)の、

「衣装は、それを着ている人の性格や過去の生活も物語る」 

という言葉の書いたメモを、今でも持ち歩いていらっしゃるそう。

  

いやいや、流石。

すごいなー。

面白い。

 

他の登場人物も、よく見ればなるほどの表現があったりする

このドラマ。

これからも目が離せません。

 

写真は、先日の帯のお太鼓の部分。

なかなかのシャレ具合でしょ?

f:id:luckykimono:20180313231500j:plain