「石川さゆりナナメ帯締め」の効力とは

着物を着る時一番先にまず、

「何を着るか」

を考えます。

これはいわゆるTPOとかコーデイネートとかいう部分です。

これについての情報は数多くあるし、私も今まで色々と発信して

きています。

なので今回は、それ以外でちょっと知っていると今までと違った見方が

できるという着方について書いてみます。

 

先日fbで、石川さゆりさんの斜め帯締めのことを書いたのですが、

皆さんも結構興味があるようで、賛否両論コメントをたくさん頂きました。

好みの問題でもあるので良い悪いの判断はさておいて、

ここでの注目は、

石川さゆり=ナナメの帯締め

という、印象がちゃんと認識されているということ

なんですね。

 

大御所と言われる芸能人の方々は、競って贅を尽くしたモノを

選び、惜しげも無く着ていらっしゃいます。

その中でさらに存在感を出すということを考えた時に、

モノではなくて、着方での表現を使った、つまり、

帯締めをナナメに締めることで、

「ザ・石川さゆり」を表現している。

ということに凄く価値があるように思うのです。

 

例えば、誰かが帯締めをナナメに締めた時、

石川さゆり風」

と言われるほどのインパクトを与えることに

成功した。

という事なのです。

 

そして、もう一つ忘れてならないのは、最近よく「こういう風に着たい」と

いう声が多い、IKKOさん。

彼女の場合は、もう、元々の骨格そのものが女性ではない(と思う)し、

それを女性らしく見せる努力、つまりは、歌舞伎の女形に近い着方を

していらっしゃること自体が個性になっているんですね。 

なので、それを真似しようとすれば、きっと全く違う印象となる。

同じような骨格の方ならば、それなりに可能性はあるかも知れませんが。

何れにしても彼女の個性は彼女のものであると私は思います。

 

着物は、ほぼ直線でできていてどの着物も形はほぼ同じです。

それは、洋服との大きな違いの一つでもあります。

裏を返せば、着方で自分の個性をメイクできるって事。

そんな着物の面白さと奥深さを、皆さんにももっと知ってもらいたいなと

思います。

 

写真は、ちょっと渋めのコーデ。

着物は、花織です。

本当は、お太鼓の部分が素敵なんですが、後ろ姿を撮り忘れ。

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ドコにナニを着ていくか問題を考える 〜着物アウェーな場面に敢えて着物で出掛ける意味〜

先日ご縁あってイタリアの時計ブランドLOCKMAN銀座店の

オープニングレセプションに伺いました。

イタリアのブランドということで、本社からいらっしゃった方々をはじめ

女性はロングドレス率も高く、会場の雰囲気からして、どう見ても着物アウェーな

感じがするこの場面。

気弱な人なら、この場面で着物で乗り込むなんてことはしないでしょうが、

私はこういう場面だからこそ、あえて着物アウェーな場面に、着物で出掛ける。

だって、着物は武器なのですから。

 

ということで、今回もこの着物を選んだ思考の順序を追ってみます。

 

まず、今回はアパレル系の華やかな会。

とはいえ、格式ある場所というわけではありません。

なので、先ずは小紋か紬とあたりをつけます。

次に、洋のブランドで集まる方々の面子を考えると、

オシャレに興味のあるプロの方々である。

なので、古典的なものよりもオシャレ度が高いもの。

ということで、の方が良いと判断。

イタリアのブランドROCKMANのテーマカラーはオレンジで、

比較的ポップな印象。

なので、敢て逆をとってシックな色柄のものの方が断然目立つ。

そして季節は初秋。

ということで、銀杏柄の黒の大島紬に決定。

 

 

 

 

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結果、このようないでたちでございます。

 

 

結論。

ナニを着て行ったらいいかと悩んだ時にまず考えたいこと。

それは、主役は誰か(自分がどこまで目立つべきかそうでないのか)

誰のためのどんな会なのか。

そこをまず把握すること。

これが、例えば同じ華やかな席であっても結婚披露宴であれば、

また違った順序であったはずなので。

 

やっぱりオシャレって楽しー♪

 

 

 

 

 

 

 

 

扇で誘い帯で泣かせる神崎流地唄舞

昨日は、ご縁あって地唄舞の会へ。
職業柄、今までに日舞へのお誘いもたくさん頂き色々と拝見して来ましたが、地唄舞は初めてでした。
解説によると、日本の古典舞踊には、舞と踊りがあり、この地唄舞地唄に合わせて「舞う」もの。その特徴は少ない動きと抑制した間で歌詞に込められたこころを表現するものとのこと。
確かに、動きはかなりゆっくりで少なく、この表現があっているかどうか分かりませんがどちらかというと太極拳に近い感じです。
その中で、最も印象的だったのは、扇と帯。
一連の舞の中で、ばっと扇を広げた瞬間の華やかさ、変わる空気感。ヒラヒラとした扇の儚くもあり美しい前姿から、踵を返して後ろ姿の帯。
それぞれの演目に合った印象的な帯結びが施されなんとも艶っぽい❣️
これほどまでに、帯結びが全体のいわゆる演出に影響があるとは。これは、動きの少ない舞であるからこそなのだと思います。
演劇評論家 渡辺保先生をして、「あんなに美しいのは見たことがない」と言わしめる、神崎流地唄舞
扇で誘って帯で泣かせる、色香漂うパフォーマンス。女性である事の喜びをもっと楽しみなさい!と言われた様な気がした秋の夜でした。

 

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季節の変わり目に何を着るかを考える

今年は、夏らしい夏というのがあまりなくて、そのまま9月に突入。

もうすっかり秋の気配が感じられるようになりましたね。

私はいつも、6月の単衣にはなるべく爽やかな色合いのものや

生地もサラッとした風合いのもの例えば塩沢紬などを着て、

9月には、こっくりした色合いのものや少し厚めの風合いのもので秋の

雰囲気を出すようにしているのですが、今年はいち早く秋の香りのするものが

着たくなってきました。

 

着物の世界では、6月から9月というのは、いわゆる夏物で裏のないものや

透け感のあるものを着ると言われています。

7月8月の盛夏には涼しさ第一で、浴衣や絽、紗などの透け感あるものを

6月9月には裏地のない単衣・・・。

考えてみれば、この4ヶ月の間にめまぐるしく衣替えをするんですよね。

 

  私達の住む日本は、四季のある国。

だから、当然のように昔から着るものは洋服和服に限らず、その季節に

合わせたものを着てきました。

そう考えると、今と昔、そして今年のように地域によって気候が

違っていたりと、通り一遍の決まりごとでは対応できない時代になって

きているのではないかと思います。 

 

一方、着物をファッション、オシャレとして捉えていく場合には

どうしても「季節先取り」という言葉に敏感になるのは確か。

小物や柄、色で季節を感じるものを取り入れていくというのは、

オシャレを楽しむひとつの方法であるわけです。

着物の場合、例えば6月の単衣には夏物の小物を9月の単衣には、

秋冬ものを使うというように。 

 

「ファッションは自由なもの」というのが大前提であるなら、

暑さ寒さの感覚、季節を先取りしたいというオシャレ心のバランスは

その人個人の個性や感じ方によるもの。

その辺り、もっと自由に着物を着る楽しさを味わってもらいたいなぁと

いつも思うのですが。

 

 

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カブリ注意報発令中!

浴衣の季節真っ盛り。

毎週のようにあちらこちらで花火大会が開催され、

色とりどりの自慢の浴衣で歩く人達を見ると、この業界に関わっている

ものとして、とても嬉しい気持ちになります。

 

そんな中で、浴衣の着方としていつも聞かれるのが、

「衿が上手く抜けないんですけど」

という事。

 

浴衣の場合には、長襦袢を着ないので、浴衣そのものをキチンと

抜いて着ないと、だんだん前にカブってきてしまうんですよね。

先日も、このブログに書きましたが、

シャツは抜襟してても浴衣は抜けない人 がホント多いです。

ちなみに、そのあたりこちらで解説してますので、参考にしてみて

下さいね。

浴衣の着方 [浴衣・着付け] All About

 

ところで、カブリで思い出したんですが、これも

前回のどこへ何を着て行くか というテーマにも

通じるお話。

 

先日、ありがたいことにまたまた友人の結婚のお祝い会に

出席させて頂きました。

季節は7月。今回は老舗の和食店での集まりということで、

あまり仰々しいものよりも、サラっとしかも少し華やかさのある

まずは絽の小紋を選択。

 

次に帯なんですが、ここでひとつ皆様に質問。

こういう場合、イチバン気を付けたいところは、

どこだと思います?

 

・・・・・

正解は、「老舗の和食のお店」というところなんですね。

 

というのも、和食店、それも老舗となれば、そこでサービスをして下さる

お姉様方が、全員和装である可能性が大きいわけです。

ということは、その方々とカブる可能性のあるものはちょっと避けたい。

特に、落ち着いた色の小紋は下手するとカブる可能性が大です。

まぁ、全く同じものということも少ないし、カブってはいけないということも

ないけれど、なんとなくバツが悪い・・・

という気分になるので、考えておいた方が気持ちよくその時間を

過ごすことができます。

これは、何も夏に限ったことではなく年間通じてのことなんですが。

 

 ちなみに、特に、そういったお店の方は無地のもの、無地に近い小紋などが多く

色は紫系、グリーン系、ブルー系が多いです。

なので、なるべくならそれらを避けもし選択肢がなければ、帯や小物でなるべく

華やかにすることがオススメです。

 

ってことで、今回のセレクトはこちら。

ちょっぴり派手目のローズの帯で、華やかに。 

 

 

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衿も着物のセレクトも、カブらないようにしたいものですよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドコにナニを着ていくか問題を考える 

 先日、若いお友達の結婚パーティに出席させていただきました。

年齢を重ねてくると、こういったパーティにお招き頂くことも

少なくなってきて、久しぶりにとても暖かな嬉しい気持ちになりました。

 

で、こういう集まりの前に必ず気になるのが、ナニを着て行くか

という問題。

ご多聞に洩れず、先日のパーティーでも前日の 仲間うちのLINEには、

「明日はどのような服装がご希望か?」というメッセージが流れ、

主役の方からは「今回は主役の2人からの感謝の会なので、平服で

お越しくださいね」 とのお返事があったものの、これまた結構

悩むものなんですね。

 

披露宴とか葬儀とかのハッキリとした冠婚葬祭の場合には、これ!という

ドレスコードがあったりして、おおよその見当がつくわけなんですが、

今回のような場合の「平服」というものはどこからどこまでの範囲なので

あろうか・・・・というぼんやり感。

はてさて、どうしたものなのか。

おそらく参加者の皆にとって「平服」という言葉がこれほど重くのしかかった

夜はないのではと思います。

 

私はというと、もうすでに着て行く着物を決めてあったのでほぼ高見の見物。 

(皆には申し訳ないけれど)

実は、着物ってこういう場面では意外にも洋服よりも調整がしやすいものなんです。

えーホント?という方に、ここでまた着物には格があって・・・というお話をすると、

 

「ああ、それ、聞いたけど分からない。

だから着物って難しいのよねー」

 

となってしまうのは必然。

なので、皆さんの参考になればと思い、

今回は特別に?実際に私が辿った当日の着物を決めるまでを書いて

みることにしました。

少しでも皆さまのお役に立てば幸いです💕

 

まず、今回は開催が文月。

なので、盛夏物であることが大前提。

実は私は3日前まで、場所の確認を怠っており、レストランでの

カジュアルなパーティーだと思っていました。

なので、初めに選んでいたのは、お祝いの席であることを考慮して、

織りの着物では少しカジュアルすぎると考えて、

絽の小紋

そして、結婚パーティーということを考えると、やはり、華やかにして行く方が

喜ばれるので、色柄は明るめのもの。

次に合わせる帯ですが、小紋を少し格上げするために、名古屋帯ではなく

袋帯を選びます。もしくは、名古屋帯の格の高めの文様(青海波など)のものでも

良いですが、選んだ小紋に合う色で考え、華やかさのある夏物の袋帯をセレクト

しました。

 

ところが3日前。

改めて場所を確認したところ、しっかりしたガーデンウエディングも可能な、

思ったよりも格式ある場所だということが判明。

ここで、先に選んでいた小紋では、ちょっと役不足である!と決断。

急遽選び直ししたのは、

縫い紋(一つ紋付)の絽の色無地。

そこに、ガッチリとした袋帯を合わせると、あまりに仰々しすぎて浮いてしまう

と考え、小紋に合わせていた華やか夏の袋帯を合わせ、微調整。

ここでなぜ、敢えて格高い訪問着を選ばなかったのか。

それは、「平服で」だから。

最後の仕上げに、 無地の着物に華やかさと豪華さをさらにプラスするために、小物として、

白珊瑚の帯留めをポイントとして使用。

という具合に、着物をセレクトしていくのであります。

全てはバランスなんですね。

場所、周りとのバランス。

あぁ

やっぱりおしゃれって楽しい。

着物って面白い。

 

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結果、このイデタチになりましてございます。 

 

おまけ。。。。

で、当日。

集まった仲間同士、

 

「これが、あなたの平服ですね」

 

と、お互いに言い合っての再会になったのは、いうまでもあリマセン。(^○^)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男女の目線の先にあるキモノ

私は常日頃から、創り手の方には「イイものを創る」という事と、後継者を育てる

という事に専念してもらいたいと思っています。そして、それができる環境を整え

創っていくのが私の使命であると考えています。

で、そんなお話を先日ある作家さんとしていたのですが、

その作家さんがポロっと

「最近若い人が少しずつ増えてはいるけれど、女性が多いんですよね」

とおっしゃるので、

「え?女性じゃダメなんですか?」

と思わず即返。

その理由をよくよく聞いてみると、

「着物は、男性がこう言う女性になって欲しいという、憧れ、理想を表現した

ものでなければいけないから」

というお返事が返ってきました。

 

なるほど。

やはり・・・というちょっぴりの残念さとそういうお話が今でもあるのだな

という変な納得感で少し悶々。

良くも悪くもなんですが。

 

その昔、着物は男性が女性に買い与えるものであったというのは本当の話。

大きなお家の広いお座敷で、お抱えの呉服商が持参した反物を広げながら

旦那さんが色々な?女性にあれやこれや選ぶイメージですね。 

でも、今は女性が自分で、自分のために着物を選ぶ時代。

自分がイイと思ったものを、自分のために買うことが当たり前の時代。

男性が自分の思いをそのまま買い与える時代ではありません。

 

でも、「そういう考えは全く受け入れられない!」

という極端な考えに辿り着くのも、どうかと思うのですね。

だって、女性の着物姿に憧れる男性が多いのも事実なのだから。

 

結局は、いわばそういった目線で着物を選ぶ時代ではなくなっているんですね。

男性目線の着物も女性目線の着物もあって良い。

というより、あって当たり前。

その時の自分を表現するにピッタリなものを、選んで楽しむ。

それは、自分のためかも知れないし、大切な誰かのためかも知れない。

自分の日常で欠かせないエッセンスとしてどんな着物を選ぶのはその人次第。

それでこそ、着物はファッションと言えるんじゃないかと私は思います。

 

そして、現代女性の気持ちとしては、できれば着物を楽しむ自分を素敵と思って

欲しいというのが本音なんじゃないですかね。

 

 

写真は、銀座 菊廼舎さんの冨貴寄というお菓子。

色合いがとても綺麗です。

 

 

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