ドコにナニを着ていくか問題を考える 

 先日、若いお友達の結婚パーティに出席させていただきました。

年齢を重ねてくると、こういったパーティにお招き頂くことも

少なくなってきて、久しぶりにとても暖かな嬉しい気持ちになりました。

 

で、こういう集まりの前に必ず気になるのが、ナニを着て行くか

という問題。

ご多聞に洩れず、先日のパーティーでも前日の 仲間うちのLINEには、

「明日はどのような服装がご希望か?」というメッセージが流れ、

主役の方からは「今回は主役の2人からの感謝の会なので、平服で

お越しくださいね」 とのお返事があったものの、これまた結構

悩むものなんですね。

 

披露宴とか葬儀とかのハッキリとした冠婚葬祭の場合には、これ!という

ドレスコードがあったりして、おおよその見当がつくわけなんですが、

今回のような場合の「平服」というものはどこからどこまでの範囲なので

あろうか・・・・というぼんやり感。

はてさて、どうしたものなのか。

おそらく参加者の皆にとって「平服」という言葉がこれほど重くのしかかった

夜はないのではと思います。

 

私はというと、もうすでに着て行く着物を決めてあったのでほぼ高見の見物。 

(皆には申し訳ないけれど)

実は、着物ってこういう場面では意外にも洋服よりも調整がしやすいものなんです。

えーホント?という方に、ここでまた着物には格があって・・・というお話をすると、

 

「ああ、それ、聞いたけど分からない。

だから着物って難しいのよねー」

 

となってしまうのは必然。

なので、皆さんの参考になればと思い、

今回は特別に?実際に私が辿った当日の着物を決めるまでを書いて

みることにしました。

少しでも皆さまのお役に立てば幸いです💕

 

まず、今回は開催が文月。

なので、盛夏物であることが大前提。

実は私は3日前まで、場所の確認を怠っており、レストランでの

カジュアルなパーティーだと思っていました。

なので、初めに選んでいたのは、お祝いの席であることを考慮して、

織りの着物では少しカジュアルすぎると考えて、

絽の小紋

そして、結婚パーティーということを考えると、やはり、華やかにして行く方が

喜ばれるので、色柄は明るめのもの。

次に合わせる帯ですが、小紋を少し格上げするために、名古屋帯ではなく

袋帯を選びます。もしくは、名古屋帯の格の高めの文様(青海波など)のものでも

良いですが、選んだ小紋に合う色で考え、華やかさのある夏物の袋帯をセレクト

しました。

 

ところが3日前。

改めて場所を確認したところ、しっかりしたガーデンウエディングも可能な、

思ったよりも格式ある場所だということが判明。

ここで、先に選んでいた小紋では、ちょっと役不足である!と決断。

急遽選び直ししたのは、

縫い紋(一つ紋付)の絽の色無地。

そこに、ガッチリとした袋帯を合わせると、あまりに仰々しすぎて浮いてしまう

と考え、小紋に合わせていた華やか夏の袋帯を合わせ、微調整。

ここでなぜ、敢えて格高い訪問着を選ばなかったのか。

それは、「平服で」だから。

最後の仕上げに、 無地の着物に華やかさと豪華さをさらにプラスするために、小物として、

白珊瑚の帯留めをポイントとして使用。

という具合に、着物をセレクトしていくのであります。

全てはバランスなんですね。

場所、周りとのバランス。

あぁ

やっぱりおしゃれって楽しい。

着物って面白い。

 

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結果、このイデタチになりましてございます。 

 

おまけ。。。。

で、当日。

集まった仲間同士、

 

「これが、あなたの平服ですね」

 

と、お互いに言い合っての再会になったのは、いうまでもあリマセン。(^○^)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男女の目線の先にあるキモノ

私は常日頃から、創り手の方には「イイものを創る」という事と、後継者を育てる

という事に専念してもらいたいと思っています。そして、それができる環境を整え

創っていくのが私の使命であると考えています。

で、そんなお話を先日ある作家さんとしていたのですが、

その作家さんがポロっと

「最近若い人が少しずつ増えてはいるけれど、女性が多いんですよね」

とおっしゃるので、

「え?女性じゃダメなんですか?」

と思わず即返。

その理由をよくよく聞いてみると、

「着物は、男性がこう言う女性になって欲しいという、憧れ、理想を表現した

ものでなければいけないから」

というお返事が返ってきました。

 

なるほど。

やはり・・・というちょっぴりの残念さとそういうお話が今でもあるのだな

という変な納得感で少し悶々。

良くも悪くもなんですが。

 

その昔、着物は男性が女性に買い与えるものであったというのは本当の話。

大きなお家の広いお座敷で、お抱えの呉服商が持参した反物を広げながら

旦那さんが色々な?女性にあれやこれや選ぶイメージですね。 

でも、今は女性が自分で、自分のために着物を選ぶ時代。

自分がイイと思ったものを、自分のために買うことが当たり前の時代。

男性が自分の思いをそのまま買い与える時代ではありません。

 

でも、「そういう考えは全く受け入れられない!」

という極端な考えに辿り着くのも、どうかと思うのですね。

だって、女性の着物姿に憧れる男性が多いのも事実なのだから。

 

結局は、いわばそういった目線で着物を選ぶ時代ではなくなっているんですね。

男性目線の着物も女性目線の着物もあって良い。

というより、あって当たり前。

その時の自分を表現するにピッタリなものを、選んで楽しむ。

それは、自分のためかも知れないし、大切な誰かのためかも知れない。

自分の日常で欠かせないエッセンスとしてどんな着物を選ぶのはその人次第。

それでこそ、着物はファッションと言えるんじゃないかと私は思います。

 

そして、現代女性の気持ちとしては、できれば着物を楽しむ自分を素敵と思って

欲しいというのが本音なんじゃないですかね。

 

 

写真は、銀座 菊廼舎さんの冨貴寄というお菓子。

色合いがとても綺麗です。

 

 

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着物はスーツ代わりになるか?

こういう仕事をしているとよく、

「毎日着物を着ているのですか?」と聞かれることがあります。

 

以前、着付けの学校で働いていた頃は、もちろん着物で出勤して

毎日が着物の生活だった時もありました。でも今は、仕事によっては着物を着ない方が良い時もあって、毎日着物を着て仕事をそしてもちろん生活しているワケでは

ありません。

皆さんの期待を裏切って申し訳無いのですが。 

 

では、どういう時に着物を着て行っているのかということを考えてみると、

例えば初めて仕事でお会いする方に会う時、ここぞというキメの時、自分を

アピールする必要がある時。

 

これって、男性がビシッとスーツを着て行く場面なんじゃない?って

思うんですよね。

  

先日ある方に、某社の編集者で毎日着物で出勤している人がいるという

お話を聞きました。 

 

そう、着物って、スーツ代わりになる。

 

私は、毎日着物を着る着物ライフを目指すよりも、着物をワードローブの

選択肢のひとつと考えて活用することが、今の時代に生きるワークングウーマン

(男性ももちろん歓迎!)の賢い選択だと思っています。

  

そんなこと色々書いた本も、よろしく❣️

着物を着るとラッキーが降ってくる | 黒柳聡子 |本 | 通販 | Amazon

 

 

 

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シャツは抜けても浴衣は抜けぬ。昨今の抜きエリ事情

 今、比較的若い世代中心に、「抜襟」(ぬきえり)というのが流行っています。

私がこれを初めて知ったのは、某ブランドのテレビCM。

大きめのシャツの襟を後ろにズラして首から離し”抜いて”着るスタイルなんですが、

ネットには、抜襟ファッションのコーディネートや抜き方の方法までがたくさん

掲載されていて、街中にはいい角度に?抜けたシャツを着た人達が溢れています。

中には半端ない人もいて、襟足から背中の上部が丸見えという人もいたりします。 

 

話は変わりますが、初心者が着物を着るときに、乗り越えるべき難関がいくつか

あります。

代表的なものを挙げると、

・衿の合わせ方

・裾の合わせ方

・腰紐の結び方

そして

・衿の抜き方(衣紋の抜き)

です。

 

そうです。

昨今流行りの抜襟は、まさに浴衣を上手く綺麗に着るためのポイントそのものなの

です。

特に浴衣の場合には、長襦袢という土台がないがために上手く抜けず前被りになって

しまうという、初心者にとっては最難関の関所のようなところです。

衿足は女性が和装を着た時にその色香を感じさせることのできる大切な場所。

なので、この衣紋が上手く抜けているかどうかで、着姿がオトナがどうか、洗練

されているかどうか、また、着物を上手く着分けているかなど、着付けの技術と

して最も大切なポイントの一つです。

(ちなみに、男性と子供は、衣紋を抜かずに着るのが基本)

  

で、ふと思うのですが、シャツであんなに上手に抜けるのに、ナゼ浴衣ではでき

ないのか?という点。

その理由を考えてみると

 

1 構造的に、どうなっているのかがわからないから

2 後から修正が効かないから 

 

という構造的、技術的なものに加えて、

 

3 衿を抜くという感覚が分からないから

 

というのが大きいのではないかと思うのですね。 

 

でも、流行りの抜襟によって、少なくとも“エリを抜く ”ということがどういう

ことかということは分かっていただけるようになったのではないか!と思ってみたり。

 

 はてさてこの抜きエリ事情。

期待して良いものやら悪いものやら。

 

 

 

  

 祖母のお下がりの夏帯。その時代にネイビーにシルバーってスゴイお洒落かも。

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 おまけ

抜きエリ事情 って言うと

とげぬき地蔵と発音が似ていると思ってちょっと笑える。。。。

 

コーディネートに必要悪はありか?

本日、渋谷からの帰りの電車の中で出会った3人のマダム。

一人は、推定年齢70代。

白のレースのワンピースにベーシュのスネークのパンプス。

アクセサリーは、グレージュの柔らかめのバッグの金具に合わせてリング、イヤリング、そしてブレスまで、夏らしく全てシルバーで統一。

それが、白いヘアにとても映えていて、“あ、この方はお洒落を楽しんでいるな”ということがよく分かる人。

もう一人は、推定年齢60代。

これまた白の比較的ボディーコンシャスなミニのワンピース。

ベージュのパンプスに質の良い長めパールを一本。

小さめの赤いバッグが、ベリーショートのヘアとよく合っていて、お洒落キャリアだなという雰囲気。 

そして、最後の一人。

推定年齢50代。

濃いめのピンクのカットソーにオレンジのボトムス。

ネイルも合わせてピンク、バッグは忘れてしまったけれど、ちょっと下世話な言い方をすると、“あぁ、お金掛けていますね。でもちょっとその組み合わせって・・・・”

という女性。

それぞれ、個性的で着るものを自分のものとして楽しんでいる人で興味深く観察したのですが、あくまでも私の感覚で言えば、最後のピンクのマダムだけは、どうしても自分の好みではない。

というか、いわゆる、趣味が悪いんじゃないかしら?と思ってしまう人・・・・。

が、実は、その車両で一番目立ち、オーラを放っていたのはピンクのマダムだったんですね。

 

そう言えば、往年の大スター美空ひばりさん。

(こんな言い方をすると、ファンに大目玉をくらいそうでちょっと怖いけれど、正直に言ってしまうと)趣味の悪さは天下一品。

でもそれがまた、彼女の個性となってその存在感を不動のものにしていたと私は思っています。

逆に云ったら、あまりに趣味の良さばかりのものでは、美空ひばりというスター自身の個性、オーラに太刀打ちできないということだったのかも知れません。

 

趣味が良い、センスが良いというのは周りの人をも良い気分にさせることができるし、それこそ、皆が憧れることでもあります。

でも、あまり趣味良く、お洒落、いわゆる、わびさびを意識しすぎるとただの地味な人になってしまう時ってあるんですよね。

これは、洋服でも着物でも同じ。 

自分自身のオーラを含めて、どこかひとつポイントがないと、スッと受け流されてしまう。だから、何かひとつポイントになるものを作る。

例えそれが、趣味が悪い必要悪なものであるとしても。

 

それにしても、本日のマダム。

3人とも太めではあったものの、ヒールのあるシューズを履いているのを見て、そういえば最近ヒールのある靴を履いていない自分に気付く私。

バレエシューズも、スニーカーもいいけれど、まずはヒールですかね。

 

 

関係ありませんが、薔薇❤️

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さて、この帯をどう料理するか。

 先日、母の実家から「家を改築するので着物や帯を何とか整理して欲しい」とお呼びが掛かりました。早速、母と2人で馳せ参じることとなったのですが、実はこの母の実家というのがそもそも女系の家。祖母と長年住んでいた姉妹4人分のコレクション?の数は相当なもので、他の親戚は誰も着物を着ないから全部任せると言われた私たちは、

引き出しを開け、たとう紙を解く度に

「これいいわね〜!」

「あっ!これ○○よ!すごいわー!」

と嬉しい叫び声をあげつつその宝の山の中を泳ぎ、選りすぐりをいただいてくるという夢のような作業をすることとなったのでした。

そんなこんなで持ち帰ったコレクション。さすが全員が着道楽であっただけあって、とても質がよく凝った作りのものがほとんど。だからもう、もう、ただ感謝感謝感謝!なのですが、中にはいいものではあるけれど、ちょっといつもの自分の好みではないというモノがやっぱりあるんですね。

あっ、これはスゴーーク良いモノだ!と思うけれど、そこは最初から自分で選んで作ったり買ったりしたものではないので、ちょっと違うんだなー。というもの。

おそらく、皆様のたんすの肥やしになっているものの中にも、こういうものが必ず存在しているのはないかと思います。

実は以前からよく、親戚や親からもらったり、お嫁入り道具として持ってきた着物や帯をどう着たらいいのか教えて欲しいという質問を受けます。

この件に関していうと、自分の好みでないモノは全く受け付けない。そういうものは一切いらない。そういう考え方ももちろんあると思います。

ですが、実は“自分が選んだモノではないもの”というのは意外に自分の着こなしの幅を広げてくれるものでもあるのですね。少なくとも私にとっては、どうやったら、自分の好みになるか。どうすれば“自分のもの”になるかというチャレンジ精神をムクムクと湧き上がらせるものであることは間違いない。

そう、こういうものがあると、私は断然燃えるのです!

この感覚ってきっと料理と似ているところがあるんじゃないかと思います。

例えば、鯛という魚があったとして、これを焼くのか煮るのかはたまた生食するのかというのは、その料理する人の腕一つ。素材を見極め、それを自分好みの味にするには何を足してどれを引き算して、スパイスには何を使おう!っていう感覚。

 

やっぱりオシャレって、楽しい〜❤️ 

  

 さて、この帯をどう料理するかな。

 

 

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ワードローブが充実すると人生が楽しくなる件

よく、ファッション雑誌などで見かける、「ワードローブ」という言葉。

そもそもの意味は、洋服ダンスという意味なんですが、ファッションの言葉で言うと、衣服の計画、つまりは、具体的な組み合わせを考えたり、またそれに伴う手入れ、保存、管理を含めて、衣生活を充実させるすべてのことだそう。

私も含めてオシャレ好きな方々にとって、まさにワードローブが充実すると、なんだかワクワクすることってありませんか?

 

着るものって、ただ洋服なり着物なりっていう“物質的なモノ”を着るって言う行為だけではなくて、それに伴うストーリーやコトが必ずあるはずなんですね。 

例えば、これ着てどこへ行くとか何かをするために着るものとか。また、この人に会うからとか、この目的があるからこれにしようとか。

だから、それが増えたりまたは組み合わせのバリエーションが増えると言うことは、人生そのものが充実していくことなんだと思うんです。

 

まあ、あまり着ることに興味ない方にとっては、関係ないお話になるかもしれませんが。

 

拘る拘らないというような難しいことではなくて、これを着てどこかに行こうとか、何をしようかを考える時に、その思い、そして感覚なんかが一緒に動く。

そしてそれらが、その人の historyとなって残っていく。

 

少なくとも、私にとって着物も洋服もそういうものなんだと思います。

 

 

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