シャツは抜けても浴衣は抜けぬ。昨今の抜きエリ事情

 今、比較的若い世代中心に、「抜襟」(ぬきえり)というのが流行っています。

私がこれを初めて知ったのは、某ブランドのテレビCM。

大きめのシャツの襟を後ろにズラして首から離し”抜いて”着るスタイルなんですが、

ネットには、抜襟ファッションのコーディネートや抜き方の方法までがたくさん

掲載されていて、街中にはいい角度に?抜けたシャツを着た人達が溢れています。

中には半端ない人もいて、襟足から背中の上部が丸見えという人もいたりします。 

 

話は変わりますが、初心者が着物を着るときに、乗り越えるべき難関がいくつか

あります。

代表的なものを挙げると、

・衿の合わせ方

・裾の合わせ方

・腰紐の結び方

そして

・衿の抜き方(衣紋の抜き)

です。

 

そうです。

昨今流行りの抜襟は、まさに浴衣を上手く綺麗に着るためのポイントそのものなの

です。

特に浴衣の場合には、長襦袢という土台がないがために上手く抜けず前被りになって

しまうという、初心者にとっては最難関の関所のようなところです。

衿足は女性が和装を着た時にその色香を感じさせることのできる大切な場所。

なので、この衣紋が上手く抜けているかどうかで、着姿がオトナがどうか、洗練

されているかどうか、また、着物を上手く着分けているかなど、着付けの技術と

して最も大切なポイントの一つです。

(ちなみに、男性と子供は、衣紋を抜かずに着るのが基本)

  

で、ふと思うのですが、シャツであんなに上手に抜けるのに、ナゼ浴衣ではでき

ないのか?という点。

その理由を考えてみると

 

1 構造的に、どうなっているのかがわからないから

2 後から修正が効かないから 

 

という構造的、技術的なものに加えて、

 

3 衿を抜くという感覚が分からないから

 

というのが大きいのではないかと思うのですね。 

 

でも、流行りの抜襟によって、少なくとも“エリを抜く ”ということがどういう

ことかということは分かっていただけるようになったのではないか!と思ってみたり。

 

 はてさてこの抜きエリ事情。

期待して良いものやら悪いものやら。

 

 

 

  

 祖母のお下がりの夏帯。その時代にネイビーにシルバーってスゴイお洒落かも。

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 おまけ

抜きエリ事情 って言うと

とげぬき地蔵と発音が似ていると思ってちょっと笑える。。。。

 

コーディネートに必要悪はありか?

本日、渋谷からの帰りの電車の中で出会った3人のマダム。

一人は、推定年齢70代。

白のレースのワンピースにベーシュのスネークのパンプス。

アクセサリーは、グレージュの柔らかめのバッグの金具に合わせてリング、イヤリング、そしてブレスまで、夏らしく全てシルバーで統一。

それが、白いヘアにとても映えていて、“あ、この方はお洒落を楽しんでいるな”ということがよく分かる人。

もう一人は、推定年齢60代。

これまた白の比較的ボディーコンシャスなミニのワンピース。

ベージュのパンプスに質の良い長めパールを一本。

小さめの赤いバッグが、ベリーショートのヘアとよく合っていて、お洒落キャリアだなという雰囲気。 

そして、最後の一人。

推定年齢50代。

濃いめのピンクのカットソーにオレンジのボトムス。

ネイルも合わせてピンク、バッグは忘れてしまったけれど、ちょっと下世話な言い方をすると、“あぁ、お金掛けていますね。でもちょっとその組み合わせって・・・・”

という女性。

それぞれ、個性的で着るものを自分のものとして楽しんでいる人で興味深く観察したのですが、あくまでも私の感覚で言えば、最後のピンクのマダムだけは、どうしても自分の好みではない。

というか、いわゆる、趣味が悪いんじゃないかしら?と思ってしまう人・・・・。

が、実は、その車両で一番目立ち、オーラを放っていたのはピンクのマダムだったんですね。

 

そう言えば、往年の大スター美空ひばりさん。

(こんな言い方をすると、ファンに大目玉をくらいそうでちょっと怖いけれど、正直に言ってしまうと)趣味の悪さは天下一品。

でもそれがまた、彼女の個性となってその存在感を不動のものにしていたと私は思っています。

逆に云ったら、あまりに趣味の良さばかりのものでは、美空ひばりというスター自身の個性、オーラに太刀打ちできないということだったのかも知れません。

 

趣味が良い、センスが良いというのは周りの人をも良い気分にさせることができるし、それこそ、皆が憧れることでもあります。

でも、あまり趣味良く、お洒落、いわゆる、わびさびを意識しすぎるとただの地味な人になってしまう時ってあるんですよね。

これは、洋服でも着物でも同じ。 

自分自身のオーラを含めて、どこかひとつポイントがないと、スッと受け流されてしまう。だから、何かひとつポイントになるものを作る。

例えそれが、趣味が悪い必要悪なものであるとしても。

 

それにしても、本日のマダム。

3人とも太めではあったものの、ヒールのあるシューズを履いているのを見て、そういえば最近ヒールのある靴を履いていない自分に気付く私。

バレエシューズも、スニーカーもいいけれど、まずはヒールですかね。

 

 

関係ありませんが、薔薇❤️

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さて、この帯をどう料理するか。

 先日、母の実家から「家を改築するので着物や帯を何とか整理して欲しい」とお呼びが掛かりました。早速、母と2人で馳せ参じることとなったのですが、実はこの母の実家というのがそもそも女系の家。祖母と長年住んでいた姉妹4人分のコレクション?の数は相当なもので、他の親戚は誰も着物を着ないから全部任せると言われた私たちは、

引き出しを開け、たとう紙を解く度に

「これいいわね〜!」

「あっ!これ○○よ!すごいわー!」

と嬉しい叫び声をあげつつその宝の山の中を泳ぎ、選りすぐりをいただいてくるという夢のような作業をすることとなったのでした。

そんなこんなで持ち帰ったコレクション。さすが全員が着道楽であっただけあって、とても質がよく凝った作りのものがほとんど。だからもう、もう、ただ感謝感謝感謝!なのですが、中にはいいものではあるけれど、ちょっといつもの自分の好みではないというモノがやっぱりあるんですね。

あっ、これはスゴーーク良いモノだ!と思うけれど、そこは最初から自分で選んで作ったり買ったりしたものではないので、ちょっと違うんだなー。というもの。

おそらく、皆様のたんすの肥やしになっているものの中にも、こういうものが必ず存在しているのはないかと思います。

実は以前からよく、親戚や親からもらったり、お嫁入り道具として持ってきた着物や帯をどう着たらいいのか教えて欲しいという質問を受けます。

この件に関していうと、自分の好みでないモノは全く受け付けない。そういうものは一切いらない。そういう考え方ももちろんあると思います。

ですが、実は“自分が選んだモノではないもの”というのは意外に自分の着こなしの幅を広げてくれるものでもあるのですね。少なくとも私にとっては、どうやったら、自分の好みになるか。どうすれば“自分のもの”になるかというチャレンジ精神をムクムクと湧き上がらせるものであることは間違いない。

そう、こういうものがあると、私は断然燃えるのです!

この感覚ってきっと料理と似ているところがあるんじゃないかと思います。

例えば、鯛という魚があったとして、これを焼くのか煮るのかはたまた生食するのかというのは、その料理する人の腕一つ。素材を見極め、それを自分好みの味にするには何を足してどれを引き算して、スパイスには何を使おう!っていう感覚。

 

やっぱりオシャレって、楽しい〜❤️ 

  

 さて、この帯をどう料理するかな。

 

 

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ワードローブが充実すると人生が楽しくなる件

よく、ファッション雑誌などで見かける、「ワードローブ」という言葉。

そもそもの意味は、洋服ダンスという意味なんですが、ファッションの言葉で言うと、衣服の計画、つまりは、具体的な組み合わせを考えたり、またそれに伴う手入れ、保存、管理を含めて、衣生活を充実させるすべてのことだそう。

私も含めてオシャレ好きな方々にとって、まさにワードローブが充実すると、なんだかワクワクすることってありませんか?

 

着るものって、ただ洋服なり着物なりっていう“物質的なモノ”を着るって言う行為だけではなくて、それに伴うストーリーやコトが必ずあるはずなんですね。 

例えば、これ着てどこへ行くとか何かをするために着るものとか。また、この人に会うからとか、この目的があるからこれにしようとか。

だから、それが増えたりまたは組み合わせのバリエーションが増えると言うことは、人生そのものが充実していくことなんだと思うんです。

 

まあ、あまり着ることに興味ない方にとっては、関係ないお話になるかもしれませんが。

 

拘る拘らないというような難しいことではなくて、これを着てどこかに行こうとか、何をしようかを考える時に、その思い、そして感覚なんかが一緒に動く。

そしてそれらが、その人の historyとなって残っていく。

 

少なくとも、私にとって着物も洋服もそういうものなんだと思います。

 

 

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だから私はひたすら着物を用意する。

新緑の眩しいこの季節。

こういう仕事をしているので、各種レセプションやパーティーなどにお招きいただくことも多く、それが毎日続くということもしばしば。

そういったお席には、もちろん着物でお伺いするのですが、朝からお昼間にかけては仰々しい姿が不向きという場合もあるので、そんな時には、面倒でも一度戻って着物に着替えるということをします。

(実はこれ、都心に住んでいる理由の一つなんです)

 

着物を「着る」ということに関しては、自分で言うのもなんですが、かなりの訓練を受けていて、着慣れていない着物でもササッと早着替え可能。でも、「何を着るか」と言うことに関しては、じっくりと時間を掛けます。

したがって、そういうお席が続く週には、あらかじめまとめてコーディネートしておくという作業が必要なんですね。

 

そして今日も来週に向けて、色々とやっています。

着物を着るって、単に着るだけではなくて、こうしてコーディネートするってことも含めてのことだと思うんです。

いえ、

むしろ、

それが一番楽しいんじゃないのかなと思います。 

 

 

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男目線か女目線かそれが問題?

先日ある京友禅の作家さんと後継者問題について話していた時のこと。

その作家さんがふと、

「最近若い人が少しずつ増えてはいるけれど、女性が多いんですよね。それがちょっとなぁ・・・・。」

とおっしゃるので、

「え?女性じゃダメなんですか?」

と思わず聞き返してしまいました。

その理由をよく聞いてみると

「着物は、男性がこう言う女性になって欲しいという、憧れ、理想を表現したものでなければいけないから。」

なんだそうです。

確かに着物は昔、男性が女性に買い与える(こういう表現が適切かどうかは別として)ものが多かったということを考えると、その感覚は分かる様な気がします。しかし、今や着物は女性が自分で選んで自分で買う時代。だから、女性目線での色柄でもいいし、むしろ女性が作る着物の方が若い人達には受け入れられるのではないの?とも思ったり。

そこで、ここはやっぱり本音を聞きたいと、もう少しお話を掘り下げてみる事に。

 「私達の作るものはね。それを着る事で、女性の色香とか優しさみたいな女性らしさを持った人になって欲しい、というものなんです」

そうか。友禅に代表される京都のはんなり系の色、柄というのは、男性好み、男性目線での着物なんだなぁ。

「で、こちら(江戸つまり東京)のものは、色気がないでしょ?黒!とか白!とか攻撃的で」

なるほど。江戸小紋に代表される江戸東京系のキリッとした色、柄。

イメージとしては、自立した女性である事は確か。

 でもそうなると、これは創り手の性別の問題ではなくて、京都 vs 江戸(東京)の問題なのではないの?

 

着物が欲しいと思った時、基準になるものは何か。
自分の目指すところはどこか。

 おりしも先日のアメリカの大統領選。

結果は予想外のトランプ氏の激勝。

世界を揺るがす大選挙も日本の誇る伝統文化も、選ぶ基準は本質的なものであって欲しいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

着物バッグ問題 ~ちょっとイイもの発見!

皆様から、よく質問される事のひとつ。

「着物を着た時は、着物用のバッグを持たないといけませんか?」

 

大雑把に言って私は、NO だと思っています。

着物を着たからといって、着物用のものを持たないといけないワケではなく、

あくまでも、トータルのコーディネートバランスとして考えていけばいいのです。

 

で、なぜ皆がこう思ってしまうのかと考えると、着物用のバッグで、

「いいな」と思うものが少ないんじゃないかと思うワケです。

 

そこで!

と言う訳ではないのですが、最近ちょっと使えそうなバッグ見つけました。

 

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これ、おそらく帯地で作られているのですが、ちょっと持つには最適な大きさ。

 

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しかも、持ち手が選べるという優れモノ。

 

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表に、ビニールも掛けられる。

(しかもこれで、一万円でおつりが来ます。)

 ザ・着物バッグに抵抗があるけど、洋服用バッグを合わせるセンスに自信がない!っていう方の普段使いにおススメかも。

 

 

それにしても写真映り悪くてスミマセン!